この人を見よ~歌手NakamuraEmiと30代半ばの創作の話~

実力や魅力や才能はとんでもなくあるのに、そのへんが世間に知れ渡っていない人っていますよね。

歌手でも芸人でもキャッチーなものがどうしても目立ってしまうから、本当の実力者がその陰に隠れてしまう。

 

CDランキングがほとんどアイドルグループで埋め尽くされるようになって久しいけれど、やっぱりそれじゃあつまらない。

別にアイドルがトップになるのも、もっと言えば〇〇商法でCDが売れるのも否定はしません。それはそれで「マーケティングの妙」という技を見せてもらっているようで感心してしまうから。

そういう意味では、西野カナさんなんかの歌詞はスゲーッて思いますもん。

これは決して皮肉ではなく、しっかりとピンポイントにターゲットを絞ってるという点では(西野さん本人なのかチームなのか分からないけど)才能ですよね。

 

実は似顔絵業界も結構似たようなもんで、とにかく「きゃわいいー」絵が売れます。

似てる似てないは二の次です(笑)

それをディスり半分嫉妬半分で「あんな絵のどこがいいんだよ!全部同じ顔じゃねえか!」と陰口を叩く、所謂「売れない似顔絵師」も少なくないですけど、僕から言わせてもらえば「お客さんのニーズも読めないならプロを名乗るな」って感じですね。

 

歌でも小説でも漫画でも映画でもそして似顔絵でも、自分の好きなようにやりたいなら趣味としてやっていけばいい。

僕らはあくまでも一般のお客さんを相手にするのだから、ニーズや時代の流れを敏感に感じなくてはいけない。

 

…といっても「媚びる」のとはまたちょっと違うので、そのへんが創作の難しいところ。「媚びる」ことに特化して作品を作り続けられたら、それはそれで立派な才能ですが。

 

そんなワケで前置きが長くなりましたが(え?今までの前置き!?)、最近ハマってるアーティストを紹介したいと思います。

 

シンガーソングライターのNakamuraEmiさんです。

保育士や自動車メーカーのエンジニアなど様々な職を転々としながら2016年にメジャーデビュー。

経歴もさることながら、メジャーデビュー時点で30歳を過ぎているという異色のアーティスト。僕と同い年なんですね。

 

で、僕は最初たまたま耳にしたその歌声に反応したのですが、聴けば聴くほど、知れば知るほど、彼女の歌詞と世界観にドップリとハマることになってしまったのです。

 

特に歌詞全体のコンセプトとして僕が最も唸ったのは「大人の言うことを聞け」という曲。

奇しくもこのブログでずっと前に書いた「大人は分かってくれない」という記事で僕が言いたかったこととピタリ重なり、勝手に共感してしまうと同時に、同じようなことを思っているはずなのにそれを一向にカタチにすることのない自分自身の才能のなさを(これまた勝手に)思い知らされた感じというか。

まあそのへんがうまく出来ないから漫画家をあきらめて今似顔絵を描いてるので(^-^;

 

「漫画家をあきらめて」という点ではもし「YAMABIKO」という曲が10年前に存在していたら、僕は不覚にもズルズルとうっかりそのまま漫画家を目指してしまったかもしれない。それくらい力強く、魂に訴えかける歌詞と声なのだ。

 

僕と同い年の30代半ばで、まだ自分の世界観をこれだけ大切にしていることへの痛さと憧れ。痛いんですよ、いろんな意味で。

「メジャーデビュー」という曲なんて痛さ以外のなにものでもない。

だからこそ刺さります。特に何かしらの創作活動に携わっている人間ならばビンビン来ると思います。

 

 

で、僕のいちばんのお気に入りが「チクッ」という曲。

なんというか、この人は決して孤独ではないと思うんだけど、常に独りであるということを連想させます。荒野を歩いてる感じ。「二兎を追う者は一兎をも得ず」を体現している感じというか。それを強く思わせる一曲。

かぐや姫の「神田川」の歌詞の本当の意味とリンクするところもあるんですよね。

「幸せになることが怖い」という感覚。

そんなNakamuraEmiさんの世界感や個人的な思いが丸出しなのに、それでいて不思議と独りよがりではないバランス感覚もしっかりとあるから、意外とこの曲に共感できるという人は多いと思います。

「甘い物が大好きなのに虫歯になるから」なんて言い回しは本当に巧いなあと思いましたね。

 

彼女のバランス感覚は最新曲の「don't」に現れていると思います。

この曲はアニメ「笑ゥせぇるすまんNEW」のために書き下ろされたものですが、しっかりと番組に寄り添って作られつつも、それでいてNakamuraEmiの世界観そのものでもあり、意外と(!?)作り手として器用な一面も見せてくれています。

 

そんなこんなで、これからの活躍に期待しております。