商売用の似顔絵というのは「絵を描く」というジャンルの中でもかなり特殊で、とりわけその中でも「下描き」はかなり異質なものである。
絵を描くときには「アタリ」「下描き」「清書」の3段階くらいの工程がある。
「アタリ」はおおまかな位置取りのこと。マルを描いて、だいたいの目や鼻の位置を決めたり、似顔絵だったら文字はどこに入れるかを決める段階。
「下描き」はそのアタリに従って鉛筆で具体的に描きこんでいくことで、「清書」はその下描きをペンでなぞり、彩色していくこと。
▲左から「アタリ」「下描き」「清書」。
(イラスト:Sai)
中にはアタリを取らないでいきなり下描きに入るひともいるし、もっとすごい人は逆に「アタリよりは描きこんでいるけど下描きほどは精密に描いてない」程度の線にいきなり清書してしまうという場合もある。
5分とか10分で完成させなければならない似顔絵のイベントなんかだと、わりとよく見られる光景。
で、今回お話したいのは「似顔絵における下描き」という問題。
本来下描きというのは、描き手本人があとで綺麗に清書さえ出来れば、どんな雑なものでもいいはずなのだが、似顔絵というのは下描きの段階でお客さんに見てもらう必要があるので、客観的に見て完成図が想像できるようなシロモノでないといけない。
この下描きにも描き手それぞれの個性というのがあって、かなりゴチャゴチャと線を何重にも描く人、うっすらとしか描かない人、下描きの時点でほぼ正確な線しか描かない人、などなど。
下の画像の様な下描きは、かなり見ずらい。でもたまにこういう人もいる。
黒の鉛筆ではなく、オレンジとかの水彩色鉛筆で描かれるとなおさら。
▲水彩色鉛筆は水を含むと消える(正確には「伸びる」)ので、消しゴムで綺麗に消す手間が省ける反面、下描きとしては見づらい。
僕は上記のタイプで言うと、いちばん最後の「正確な線しか描かない人」である。
元々そういうタイプではあるのだが、似顔絵通販を立ち上げて以降は必ずお客さんに下描き確認をしてもらうので、より一層その傾向は強くなった。
僕の下描きは、たまに自分でも「これ下描きか?」と思っちゃうくらい、余計な線が全然ないときがある。これはお客さんに分かりやすいように、余計な線を消しゴムで消しているから。
でも本来、そんな作業は、下描きをする上では全く必要のないことで、「下描きを見せる」ことが必要な似顔絵ならではの現象である。
これは実際の下描き。
特に顔周りに関しては、いわゆる「下描きっぽい」感じのする何重にも重なった線などはほとんどないのが分かる。
逆に、犬の鼻などは黒く塗ったりしている。動物は色の有無で全然違う印象を与えるから、あとで絵の具で表現したりするところ(つまり、鉛筆で下描きをする必要はない部分)も鉛筆で分かりやすく表現しておく。
同様に男性のシャツも黒くしている。これは「色のついたシャツで仕上げますよ」という無言のアピール。こうしておくと「白いシャツで仕上がると思った」といったすれ違いが無くなる。
ところで上の画像、顔に十字線が描いてあるのが確認できるのだが、僕は人物を描く際に、いわゆる「丸描いて十字線」というのはやらない。
丸を書いて大まかな位置取りくらいはするけど、十字線でアタリを取ることはしないで、いきなり目や眉毛から描く。
え~、今回のポイントはぁ(⤴)
「アタリを取らないはずなのに、下描き画像に十字線が描いてあるのは、ナゼか…??」
んふふふふふふふ。もうお分かりですねぇ~~。
解決編は次回で。
古畑任三郎にまた最近ハマっている人でしたぁ。