「キック・アス/ジャスティス・フォーエバー」(2013・アメリカ)
あらすじ
キック・アスことデイヴ(アーロン・テイラー=ジョンソン)と、ヒット・ガールのミンディ(クロエ・グレース・モレッツ)は普通の日々を送っていた。ところがそんなある日、デイヴは元ギャングで運動家のスターズ・アンド・ストライプス大佐(ジム・キャリー)とスーパーヒーロー軍団“ジャスティス・フォーエバー”を結成。そこへ、レッド・ミスト(クリストファー・ミンツ=プラッセ)が父親を殺害された恨みを晴らそうと、刺客と共に乗り込んできて……。(シネマトゥデイより)
前作「キック・アス」は2~3年前くらいに鑑賞。
難しい話ではないので大雑把には内容を覚えていたし、なによりヒット・ガールの魅力とインパクトは忘れたくても忘れられない。
なにしろ、まだ小学生の女の子が所謂アメコミヒーローの恰好で、(わりとこちらが思ってた以上に)清々しいまでに人を殺しまくるのだ。
やってることの残虐さとグロさに反して、素顔のヒット・ガールことミンディことクロエちゃんがまあ~~可愛い。
日本で言えば、芦田愛菜ちゃんが仮面をつけてマントを翻しながら、向かってくる大勢のヤクザを相手に重火器や日本刀で単身立ち向かい、超人的な運動神経で次々と敵を殺していく、みたいなことだろう。
ところで、この作品の主人公はその美少女暗殺者ではなく、タイトルにもあるようにキック・アスこと冴えない高校生のデイヴだ。
彼はアメリカン・コミックのスーパーヒーローへの強烈な憧れをこじらせて、自らヒーローとして活動を開始する…というのがこの物語の発端。
ヒーローといってもスーツはネット通販のヘンチクリンな衣装だし、当然特殊能力があるわけでもない。ほどなく彼は、とある麻薬密売人のアパートで大ピンチを迎えるのだが、そこに現れるのが本物のヒーロー、ヒット・ガールというわけである。
そんなこんなで、本物のヒーローVS悪の戦いに巻き込まれていく、というのが前作の大まかな内容。
その斬新さや既存のアメコミヒーローものにはなかった軽さや下品さ、そしてそれらを絶妙なバランスでまとめ上げたセンスがウケて、口コミで人気が広がっていった快作である。
こうして1作目「キック・アス」は確かに一定の評価を得たわけだが、その魅力の大部分はヒット・ガールのキャラも含めた斬新な設定や目新しさであり、乱暴な言い方をしてしまうとそれは「出オチ」みたいなものだ。
冴えないヒーローかぶれの高校生と美少女暗殺者という設定。
この設定が、今までのアメコミヒーローにはなかったテイストを生み出しているのは間違いない。
同時にその設定、とくに美少女暗殺者の初見のインパクトを1作目で味わった時点で、もうこの作品のおいしいところはあまり残っていない…と言ったらやっぱりちょっと乱暴すぎるかもしれないけども、少なくともインパクトは相当減る。
もちろん制作者も、そのあたりのことは当然理解して続編に臨んでいるはずである。
実際、この「ジャスティス~」ではデイヴもすでにヘタレとは言えないくらいの戦闘能力を有してしまっているし、ヒット・ガールも(まだまだ大人には見えないけれど)普通に中高生という感じに成長してしまっている。
出オチのインパクトが無くなるのならば「前作の純粋なパワーアップ版」を作るしかない(おそらく予算も増えただろうし)。
が、そのパワーアップの仕方が、単純にキャラ数を大幅に増やしたり、前作以上に下品でバカげた大量虐殺だったり…まあ続編としては真っ当な作り方かもしれないけど、前作で取れていた奇跡的なバランスが今作ではいびつな仕上がりとなってしまったのは残念だ。
そのいびつさの例をひとつ挙げよう。それは音楽の使い方だ。
今回はマザー・ロシアというボディービルダー風の悪役が好き放題に暴れまくるのだが、その殺戮行為の場面で流れる曲がロシア民謡の「コロベイニキ」。テトリスのBGMでオナジミのアレだ。
この曲が掛かって思わず笑ってしまったのだが、「いやいやいや、軽快なミュージックを流せば、どんなグロも反道徳的行いも許されると思うなよ!」と思い直す。
前作でもそのセンスは大いに発揮されているのだが、やはり今作では今一つバランスに欠けるというか、悪ノリが過ぎる印象がある。
このへんの悪ノリは同じ監督の次回作「キングスマン」でひとつの頂点を見ることになる…が、それはまた別の機会に。
ストーリーに関しても、そのアンバランスさは出てしまっている。
前作にも登場した重要人物があっさり死んでしまったり、ダークナイト的なシリアスなテーマを入れてしまっている点も、おバカな娯楽作としては中途半端。
そのわりにはある人物のとんでもない裏切りというか浅はかな行為は、誰も全く追及しないというチグハグさ。
とは言うものの、今作でもキレッキレのアクションを見せるヒット・ガールことクロエちゃんは相変わらず魅力的だし、見どころは決して少なくない。
面白いかつまらないかを訊かれたら「面白かった」と答える。
ただ、「たぶん2作目だからあんな感じだろうなあ」と漠然と描いていた印象が悪い意味で大正解だったのが残念だなと。
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