「運命じゃない人」(2005年・日本)
あらすじ
典型的ないい人・宮田(中村靖日)をはがゆく思っていた私立探偵の神田(山中聡)は、いつまでも前の彼女のことを引きずっている宮田のために、レストランで1人で寂しそうに食事をしている女性(霧島れいか)をナンパするが……。(シネマトゥデイより)
内田けんじ監督の劇場用長編デビュー作。
内田監督といってもピンと来ない人でも、大泉洋主演の「アフタースクール(2008年)」や堺雅人と香川照之が共演した「鍵泥棒のメソッド(2012年)」という名前ならば、もしかしたら聞いたことがあるかもしれない。
全ての作品で監督、脚本を担当している。
今回僕は(5年ぶりだか7年ぶりだか忘れたが)とにかくひさびさに鑑賞したのだが、
十分面白かった。アニメとギャグと洋画ならコメディくらいしか観ないウチの奥さんでも興奮していたくらいだから、相当じゃないかなと思う。
本作「運命じゃない人」は豪華俳優陣を起用した後続作と比べると、低予算ぶりがそこかしこに見られ、若干チープな印象を与えるかもしれない。
が、役者が有名じゃないとか、画が安っぽいとか、そんなものはどうでもいいのだ!結局映画は脚本の出来が良ければ、低予算でも面白いものは面白い!
まだ観ていない人がいたら、こんなブログはすぐに閉じて、是非レンタルビデオ屋さんに借りに行くことを強くオススメする。
出来れば何も知らない状態で、先入観もなしに、気軽にボケーっと観て欲しい。
かっぱえびせんでもポリポリさせながら、おしりを掻きつつ、力を抜いて、期待度ゼロで。たまに鼻でもほじるくらい気を抜いているなんてのもいい。
最初の30分はそんな状態で観られるかもしれない。が、そこからがこの映画の真骨頂!開始40分あたりできっと「あら、もしかしたら、この映画って面白いんじゃない!?」と身を乗り出し、ついさっきまで鼻をほじっていた自分を恥じ、背筋を伸ばしちゃったりするはずだ。かっぱえびせんは止まらないかもしれないが。
というわけで、あまりネタバレはしたくないが、すでに観た人のために以下少し内容に触れてみたい。
まず、誰もが思うところ(もしくは思わせないところ)だが、「時系列が入り組んでるのに1回の鑑賞で十分理解できる構成力、脚本の巧みさ」が本作の特徴。
「ちょっとでも頭を使いそうな映画とか本などがあれば、いつの間にか姿を消すかマジで頭痛を起こす」でオナジミのウチの奥さんでさえ1発で内容を理解出来ていたのだから、いかに脚本編集が巧いかが分かろうというもの。
トリッキーな構成にばかり目が行きがちだが、台詞の言葉選びだったり、ウィットに富んだ男女の会話だったりと、万人受けするバランスの良さもきっちりと持っている。
あえて弱点(?)を言うならば、あまりにも脚本を無駄なく作りすぎてしまったおかけで、想像の余地が入り込む隙間がないことだろうか。
これを弱点と言ってしまうのは欲張りすぎなのは分かっているが、例えば2回目の鑑賞時だからこそ気づける「本筋とは関係ない小ネタ」だったり、モブにしか見えなかったのによく見ると重要人物が隠れていたり……とか。
なんてことを言いつつも、1回目の鑑賞中の興奮、そして鑑賞後の「パズルのピースがすべて埋まったスッキリ感」は格別だったので…うん、弱点なんかじゃないな。すいませんでした。
ちなみにこの後の「アフタースクール」「鍵泥棒のメソッド」も平均以上の面白さ、世間的評価を受け、今のところ「内田けんじにハズレなし!」という印象。
が、作風が少しマンネリ気味という危惧と、あまり多作ではないことがちょっと心配。そろそろ新作が観たいところだ。